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モームリの事件のニュースを見て、退職代行ってそもそも違法なのでは、と不安になった人も多いと思います。
結論から書くと、退職代行というサービスそのものは違法ではありません。問題になるのは、弁護士ではない業者が法律で許されていない範囲のことまで引き受けることです。どこまでが大丈夫でどこからが危ないのかが分かれば、安全な業者はちゃんと選べます。

- 退職の意思を伝えてもらうだけなら、民間企業の退職代行でも違法ではない
- 弁護士でない業者が報酬をもらって会社と交渉するのは「非弁行為」になりうる
- モームリは、報酬目的で利用者を弁護士に紹介した弁護士法違反で有罪判決を受けた
- 罰則の対象は業者側。ただ頼んだ側も退職がこじれるリスクを背負う
- 会社との交渉が必要なら、弁護士か労働組合が運営するところを選ぶ
退職代行が違法になるのはどんなときか
会社を辞めること自体は、働く人の自由です。本人の「辞めます」という意思を、使者として会社に届けるだけなら法律上の問題はありません。これが民間の退職代行の基本的な仕組みです。
問題になるのは、その先です。弁護士法72条は、弁護士でない者が報酬を得る目的で法律事件の代理や和解などの法律事務を扱うことを禁じています。法律事件を弁護士に「周旋」すること、つまり紹介して仲介することも同じく禁止です。これに違反することを一般に非弁行為と呼んでいます。
退職の場面でいえば、次のようなことを民間業者が代わりに話し合うと非弁行為にあたるおそれがあります。
- 有給休暇の消化や退職日を会社と交渉する
- 未払いの残業代や退職金を請求する
- パワハラの慰謝料について話し合う
- 会社からの損害賠償の請求に反論する
東京弁護士会も2025年10月に、民間業者ができるのは退職の意思を伝えることまでだと注意を呼びかけています。残業代の請求など法律的な問題を本人に代わって交渉するのは非弁行為にあたる、という整理です。
運営形態ごとに「できること」は決まっている
退職代行を運営しているのは、主に弁護士・労働組合・民間企業の3つです。行政書士が運営しているところもあります。それぞれ法律上できる範囲が違います。
| 運営形態 | 退職の意思を伝える | 有給消化・退職日の交渉 | 未払い賃金などの請求 | 根拠 |
| 弁護士 | ○ | ○ | ○ | 弁護士法 |
| 労働組合 | ○ | ○(団体交渉) | △ | 憲法28条・労働組合法 |
| 民間企業 | ○ | × | × | 使者として伝えるだけ |
| 行政書士 | ○ | × | × | 書類作成が中心 |
労働組合には団体交渉権があるので、組合員の労働条件について会社と交渉できます。民間企業の退職代行にはできない交渉ができるのは、このためです。
ただ、東京弁護士会は労働組合が交渉する場合でも、内容によっては非弁行為にあたる可能性があるとも指摘しています。未払い賃金の請求や裁判まで見すえた話になるなら、最初から弁護士に頼んだ方が確実です。
行政書士が運営する退職代行も、会社との交渉はできません。たとえば退職代行retryは行政書士事務所の運営なので、有給消化や未払い賃金の請求といった交渉は頼めません。
モームリ事件で何が起きたのか
退職代行の違法性が一気に注目されたのが、モームリの事件です。報道されている事実を、このサイトのモームリの記事と同じ内容でまとめておきます。
モームリを運営する株式会社アルバトロスは、2025年10月に弁護士法違反(非弁提携)の疑いで警視庁の家宅捜索を受けました。当時は日本経済新聞などが大きく報じています。2026年2月には代表取締役(当時)らが逮捕されました。時事通信(2026年2月24日)の報道によると、同日に社長と執行役員、法人としての同社が弁護士法違反罪で起訴されています。
判決は2026年8月28日に東京地裁で出ました。元社長は懲役2年・執行猶予3年、元執行役員の妻は懲役1年6か月・執行猶予3年です。法人には罰金200万円の有罪判決が言い渡されました。判決の内容はJ-CASTニュースに詳しく載っています。報道では、2023年6月〜2025年2月ごろに報酬目的で利用者計174人を弁護士に紹介したとされています。
ポイントは「交渉」ではなく「紹介」だった
意外に思われるかもしれませんが、モームリで問われたのは会社との交渉ではありません。残業代の請求などを希望する利用者を、報酬を受け取って提携先の弁護士に紹介していたことです。報道ではこの有償のあっせんが弁護士法違反に問われていて、72条が禁じる「周旋」の問題として受け止められています。
紹介を受けた側の弁護士法人みやびの代表弁護士と法人も、弁護士法違反罪で起訴されたと報じられています。経緯は「弁護士法人みやびの記事」に書きました。
「顧問弁護士がついている」「弁護士と提携している」という宣伝は、安心材料のように見えます。でもその提携にお金のやり取りがあれば、それ自体が違法になりうる。これがモームリ事件のいちばんの教訓だと思います。

違法な退職代行に頼んだら利用者も罰せられる?
弁護士法72条で罰せられるのは、報酬目的で法律事務を業として行った側です。退職代行を頼んだ利用者が、それだけで罪に問われる決まりはありません。モームリの事件でも、起訴されたのは運営会社と経営陣、それに弁護士側です。
とはいえ、利用者にまったく影響がないわけではありません。
- 会社が「代理権のない業者とは話さない」と対応を拒むことがある
- 有給消化や未払い賃金の話が途中で止まり、結局自分で交渉するはめになる
- 業者が摘発やサービス停止で連絡不能になり、退職の手続きが宙に浮く
罪には問われなくても、辞めるまでの負担が結局自分に返ってくる。違法な業者を避けたいのは、この理由が大きいです。
逆にいえば、退職の意思を伝えるだけで済む状況なら、民間企業の退職代行でも困ることはあまりありません。会社がすんなり受け入れてくれそうか、有給や残業代の話が出そうか。頼む前にこの2つを考えておくだけで、選ぶべき運営形態はほぼ決まります。
安全な退職代行の選び方
1. 運営元がどこかを最初に確認する
公式サイトの会社概要や特定商取引法の表記で、運営しているのが弁護士・労働組合・民間企業のどれかを確認してください。運営会社名や住所、料金がはっきり書いていない業者は避けた方が無難です。
ITmedia NEWSが伝えた帝国データバンクの調査では、2025年10月時点でサービス実態のあった52事業者のうち14事業者が、2026年9月までにサービス継続を確認できなくなっています。業者そのものが消えるリスクもあるということです。
2. 弁護士なら登録を確かめる
弁護士運営をうたっているなら、担当する弁護士の名前が公式サイトに出ているかを見てください。日本弁護士連合会の弁護士検索で、名前から登録を確かめられます。
「弁護士監修」と「弁護士が対応」は意味がまったく違います。監修はサイトの内容をチェックしているだけで、会社と交渉してくれるわけではありません。
3. 労働組合なら組合の名前と実態を見る
労働組合型なら、どの組合が運営しているのかが公式サイトに書かれているかを確認します。民間企業が窓口で、裏で組合と「連携」している形もあります。その場合は組合に加入して初めて交渉してもらえることが多いので、申し込むプランの中身を見ておいてください。
4. 民間企業が「交渉します」と言っていたら要注意
民間企業の退職代行が「有給消化も交渉します」「未払い給料も取り返します」とうたっていたら、それは本来できない範囲です。安さに惹かれる気持ちは分かりますが、ここは疑ってかかった方がいいと思います。
5. 弁護士への「紹介」をすすめてくる業者に気をつける
モームリの件を見ると、残業代などの相談をすると提携の弁護士を紹介される流れには注意が必要だと感じます。弁護士に頼みたいなら、最初から自分で弁護士の退職代行を選んだ方がすっきりします。料金も最初から分かるので、あとから思わぬ費用がかかる心配も減らせます。
安心して頼める退職代行
運営元がはっきりしていて、会社との交渉までできるところを選びました。
弁護士が直接対応:弁護士法人ガイア総合法律事務所
弁護士が代理人として会社とやり取りしてくれる退職代行です。有給休暇の消化、未払い給与や残業代の請求、損害賠償を請求されたときの対応まで任せられます。非弁行為の心配がいちばん少ない選択肢です。
- 料金:25,300円プラン(意思を伝えるのみ)/55,000円プラン(アフターフォロー付き)/77,000円プラン(あらゆる雇用形態に対応)
- 未払い給与・残業代の請求:成功報酬20〜30%(獲得できた場合のみ)
- 相談:LINEで無料
労働組合が運営:男の退職代行/わたしNEXT
合同労働組合「退職代行toNEXTユニオン」が運営しています。団体交渉として退職日や有給消化について会社と話し合えるのが強みです。料金は正社員などで21,800円+組合費1,000円、追加料金はなく全額返金保証もついています。
結局どこに頼めばいいか
退職代行そのものは違法ではありません。気をつけたいのは、民間業者が交渉までしてしまうことと、弁護士への紹介でお金を受け取るような仕組みです。会社と少しでも揉めそうなら弁護士、費用を抑えつつ交渉もしてほしいなら労働組合を選んでおけば安心です。
各社の運営元と料金をまとめて比べたい人は「退職代行おすすめ比較ランキング」を見てみてください。民間企業の退職代行の仕組みは「民間企業の退職代行とは」に書いています。

































