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退職代行を使ったら、会社から損害賠償を請求されたり懲戒解雇にされたりしないか。辞めたい気持ちより、その不安の方が大きくなっている人もいると思います。
退職代行を使ったことだけを理由に損害賠償が認められたり、懲戒解雇が有効になったりする可能性はかなり低いです。ただ、ゼロとは言い切れない場面もあります。どんなときにリスクがあるのかを知っておけば、必要以上に怖がらずに済みます。

- 会社を辞めるのは働く人の権利で、退職代行を使うこと自体も違法ではない
- 会社が損害賠償を請求しても、実際に認められるのは限られたケースだけ
- 退職の意思をきちんと伝えていれば、無断欠勤による懲戒解雇の心配はまずない
- すでに「訴える」と言われている人や有期契約の人は、弁護士の退職代行を選ぶ
退職代行を使うこと自体は違法ではない
会社を辞めるのは働く人の権利です。
正社員など期間の定めがない雇用なら、民法627条で、辞めると伝えてから2週間で雇用が終わると決まっています。会社の許可は要りません。その意思を本人の代わりに伝えてもらうのが退職代行なので、使ったこと自体が違法になることはありません。
気をつけたいのは、誰に頼むかの方です。東京弁護士会は、弁護士でない業者が本人の代わりに会社と交渉するのは非弁行為にあたるおそれがあると注意しています。ただ、これは業者側の問題です。利用した本人が罰せられる話ではありません。
損害賠償を請求されることはある?
会社が損害賠償を「請求すること」自体はできます。ただ、請求されることと、裁判で認められることは別の話です。
会社が損害賠償を勝ち取るのは難しい
会社が退職した社員に損害賠償を認めてもらうには、実際にどれだけの損害が出たのか、それが本人の退職のせいなのかを会社が示さないといけません。
普通に辞めただけなら、人手が足りなくなるのは会社が人員を手当てする問題と見られやすいです。だから、実際に訴えるところまでいく会社はあまり多くありません。弁護士費用や手間を考えると、会社にとっても割に合わないことが多いんです。
損害賠償が認められた例もある
ゼロではない、というのも正直に書いておきます。
よく知られているのが、東京地裁の平成4年9月30日の判決(ケイズインターナショナル事件)です。取引先との契約を担当するために雇われた社員が、入社から1週間ほどで欠勤して辞めてしまいました。会社は取引先との契約を失い、社員が辞めた後に「損害のうち200万円を払う」と約束したとして、その支払いを求めた裁判です。
それでも判決で認められたのは70万円でした。会社側の採用や労務管理にも問題があったことが考慮されています。本人が支払いを約束していたという特殊なケースでも、請求額の3分の1程度に抑えられたわけです。
「辞めたら罰金」は無効
「途中で辞めたら違約金○万円」「研修費を全額返してもらう」と言われることもあるかもしれません。
労働基準法16条は、労働契約を守らなかったときの違約金や損害賠償の額を前もって決めておくことを禁じています。辞めたら罰金という約束は、この条文に反するものです。研修費の返還も、中身によってはこの条文に反すると判断されることがあります。
損害賠償のリスクが上がるケース
普通に辞めるだけならリスクは低いです。ただ、次のようなケースでは話が変わってきます。
| ケース | リスク | なぜ危ないか |
| 正社員が退職の意思を伝えて辞める | 低い | 民法で認められた権利だから |
| 有期契約の途中で辞める | やや注意 | やむを得ない事由が必要で、辞め方によっては損害賠償の話になりうる |
| 会社の物やデータを返さない・持ち出す | 高い | 辞めることとは別に、会社の財産を損ねる行為になる |
| 顧客や同僚を引き抜いて辞める | 高い | 競業や引き抜きが悪質だと損害賠償の対象になりうる |
| 会社に大きな損失が出ると分かっていて、わざと放り出す | 高い | 会社に損害を与える目的があると見られやすい |
契約社員など期間の定めがある場合
契約期間が決まっている人は、途中で辞めるのに「やむを得ない事由」が必要です(民法628条)。同じ条文には、その事由が片方の過失で生じたときは相手に損害賠償の責任を負う、とも書かれています。
とはいえ1年を超える契約で働き始めてから1年が過ぎていれば、労働基準法137条によっていつでも辞められますし、パワハラや体調不良のように辞めざるを得ない事情がある場合もあります。有期契約の人は自分で判断せず、弁護士に相談してから動いた方が安心です。
貸与品やデータの扱い
退職代行を使う人が見落としがちなのがここです。パソコンや社員証、鍵などの貸与品は、郵送できちんと返してください。仕事のデータを私用のスマホやクラウドに残したまま辞めるのもやめておいた方がいいです。
辞めたこと自体より、こうした後始末の方がトラブルの火種になりやすいと思います。

懲戒解雇になることはある?
退職代行を使ったというだけで懲戒解雇にされる可能性は、かなり低いと考えてください。
懲戒解雇は、会社が社員に下す処分の中でいちばん重いものです。労働契約法15条では、客観的に合理的な理由がなく社会通念上相当と認められない懲戒は無効になると決められています。退職代行で辞めると伝えただけで、この高いハードルを越えるのは難しいはずです。
危ないのは「無断欠勤」
懲戒解雇の話でよく出てくるのが無断欠勤です。厚生労働省の資料では、懲戒解雇の判断の目安の一つとして「2週間以上正当な理由がなく無断欠勤し、出勤の督促に応じない場合」が挙げられています。
裏を返せば、何も言わずに会社へ行かなくなるのがいちばん危ないということです。退職代行を使えば辞める意思は会社に届きます。残りの期間を有給休暇や欠勤にしてもらう形になるので、黙って休み続けるのとは扱いが違います。
退職金への影響
就業規則で「懲戒解雇の場合は退職金を払わない」と決めている会社はあります。だからこそ、懲戒解雇を言い出されたらそのままにしないでください。処分が妥当かどうかを争えるのは、弁護士だけです。
退職代行を使う前にやっておくと安心なこと
トラブルの芽は、退職代行に頼む前に摘んでおけます。どれも難しいことではないので、できる範囲でやっておいてください。
- 雇用契約書と就業規則を手元に置く:契約期間の有無や退職金の規定を確かめられます。写真で残しておくだけでも違います。
- 貸与品をリストにする:社員証や鍵、パソコン、制服など返すものを書き出しておくと返し忘れを防げます。
- 仕事のデータを私物に残さない:私用のスマホやクラウドに業務ファイルがあれば、辞める前に消しておきます。
- 引き継ぎのメモを用意する:義務ではありませんが、担当業務の状況を簡単にまとめて郵送すれば、会社が困る場面はぐっと減ります。
- 上司から言われたことを記録する:「辞めたら訴える」などと言われた日時や内容をメモしておくと、弁護士に相談するときに役立ちます。
引き継ぎのメモは、会社に「わざと放り出した」と言わせないための保険にもなります。個人的には、これがいちばん役に立つ対策かなと思っています。
会社から「訴える」と言われたときの対処法
退職代行を使ったあと、会社から「損害賠償を請求する」「懲戒解雇にする」と言われることがあります。実際には脅しで終わることが多いのですが、放っておくのも不安だと思います。
自分で言い返さない
会社から直接電話やメールが来ても、感情的に返事をしないでください。その場で「払います」「分かりました」と言ってしまうと、あとで不利になることがあります。やり取りは退職代行か弁護士を通すようにして、届いた書面やメッセージは消さずに残しておきます。
民間と労働組合では対応できない
損害賠償の請求は法律の争いです。民間企業の退職代行はもちろん、労働組合でも本人の代理人として裁判などに対応することはできません。
会社がすでに強い態度を見せているなら、最初から弁護士の退職代行に頼んでおくのがいちばん手戻りがありません。途中で弁護士に頼み直すと、料金も二重にかかってしまいます。
損害賠償が心配な人は弁護士の退職代行へ
次のどれかに当てはまる人は、弁護士が対応する退職代行を選んでおくと安心です。
- 上司から「辞めたら損害賠償を請求する」と言われたことがある
- 契約社員など、契約期間の途中で辞めたい
- 大きな案件の担当で、辞めたら会社に損失が出るかもしれない
- 未払いの残業代もついでに請求したい
個人的には、こうした不安がある人には弁護士法人ガイア総合法律事務所が合っていると思います。2026年9月時点の料金は、退職の意思を伝えるだけのプランが25,300円です。アフターフォロー付きは55,000円、あらゆる雇用形態に対応するプランは77,000円でした。会社から損害賠償を持ち出されたときも、弁護士がそのまま対応してくれます。LINEでの相談は無料なので、まずは自分のケースで心配する必要があるのかを聞いてみてください。
会社と揉める要素がなく有給消化の交渉だけしてほしい人なら、労働組合が運営する男の退職代行でも十分です。21,800円に組合費1,000円で、団体交渉までしてもらえます。
不安で迷っているなら
辞める意思をきちんと伝えて貸与品を返し、データを持ち出さない。これさえ守れば、損害賠償も懲戒解雇も心配することはほとんどありません。怖いのは、不安で動けないまま心身をすり減らしてしまうことの方だと思います。
弁護士の退職代行については「弁護士の退職代行とは」に詳しく書きました。料金の比べ方は「退職代行の料金相場」、各社の違いは「退職代行おすすめ比較ランキング」にまとめています。
この記事の内容は2026年9月29日時点のものです。個別の事情で結論が変わることもあるので、心配な人は弁護士に相談してください。
































