近年、注目を集めている「退職代行サービス」ですが、退職代行サービスを使わずに自分で退職することのメリットは多岐にわたります。ざっと挙げるだけでも
・費用の節約
・直接コミュニケーションの利点
・将来の関係構築
・信頼の維持
・トラブル回避
・自己成長
・手続きの透明性
・適切なタイミングの調整
・法的問題の回避
・自己責任の実行
と、自分で退職手続きを行うことは多くのメリットがあります。
もちろん、状況によっては退職代行サービスを利用することが適切な場合もありますが、可能な限り自分で手続きを行うことを検討することが望ましいというのも確かかなと思われます。
そもそも、退職は、労働者個人の事情による「自己都合退職(退職願・退職届という書面を提出)」と、会社・事業者側の事情による「会社都合退職(普通解雇や懲戒解雇、整理解雇解雇)」に大別されます。
この記事では、前者の「自己都合退職」の流れを解説しています。
退職の意思を固める
まず、退職の意思を固め、自分が本当に辞めたい理由や次のステップを明確にします。
言うなれば自己分析ということになります。
自分自身に問いかけて、なぜ退職を考えているのか、その理由を明確にします。理由には、職場の環境、キャリアの方向性、人間関係、健康問題などが含まれることがあります。
退職の意思を固めなければいけない理由としては、退職を申し出た後は原則、撤回や取り消しができないためです。(状況や会社の対応によっては撤回が認められる場合もあります)
退職の申し出には、「合意退職」と「自主退職」があります。
合意退職とは、会社と社員が話し合いの上で、退職の条件や時期について合意し、退職する方法です。
合意退職の場合の撤回するタイミング①合意が成立する前
会社と社員が正式な退職合意に達する前であれば、退職の申し出を撤回することが可能です。例えば、退職条件についての最終的な合意書にサインをする前であれば、話し合いの場で撤回を申し出ることができます。
合意退職の場合の撤回するタイミング②書面による合意がなされる前
退職に関する書面(例えば、退職合意書)がまだ取り交わされていない段階であれば、退職の意思を撤回することができます。
自主退職とは、社員が自己の意思で会社に退職を申し出て退職する方法です。
自主退職の場合の撤回するタイミング①退職日までの期間
一般的には退職日の2週間前までに会社に申し出る必要があります。この期間内であれば、退職日までに撤回の意思を伝えることが可能です。ただし、会社の就業規則により異なる場合がありますので、具体的な規則を確認する必要があります。
自主退職の場合の撤回するタイミング②会社の同意がある場合
たとえ退職日が近づいていても、会社が退職の撤回を認める場合には、退職の申し出を撤回することができます。(あくまで会社の同意が必要)
また、退職を考える段階で次のステップの計画まで立てる方もいれば、そうでない方もいるかと思いますが、退職後の計画を立てる場合は、次の就職先を探す、自己啓発をする、休養を取るなど、具体的な目標を設定します。
上司への相談
退職の意思が固まったら、最初に直属の上司に相談します。理想的なタイミングとしては、繁忙期を避け、上司の予定や会社の状況を考慮するのが良いです。
上司に相談するタイミングは重要です。繁忙期や重要なプロジェクトの最中は避け、できるだけ上司の負担が少ない時期を選びます。
とはいっても、2、3ヶ月ないし1ヶ月前には、上司に伝えるのが良しとされていますが、法的には、退職希望日の2週間前までに伝えれば、退職は可能となっています。
当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から2週間を経過することによって終了する。(民法第627条第1項)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
退職日の調整
会社の就業規則や契約内容に基づいて、退職日を調整します。通常は退職願提出後1ヶ月程度が一般的です。
退職日の調整・決め方についてですが、よく、「退職日の決め方を間違えると損をする」なんて言われています。
この「損をする」とは、お金のことです。
お金とは
・社会保険料(健康保険/厚生年金
・退職金やボーナス(賞与)
が挙げられます。
自身の職場環境・就業規則をしっかり把握した上で、退職日を決定するようにしましょう。
引継ぎ業務などある場合は、それが完了するよう、余裕を持って上司や人事部と相談の上、退職日を設定することが重要です。
退職願・退職届の提出
上司に退職の意思を伝え、退職日を決めた後、正式に退職届または退職願を提出します。
退職届・退職願のポイントや違いは以下の通りです。
退職届: 退職願よりも正式な書類で、一度提出すると撤回が難しいため、提出前にしっかりと考える必要があります。
退職願: 退職の意思を表明する書類で、上司や人事部に提出します。退職理由や希望する退職日を記載し、口頭での相談後に提出することが一般的です。
ちなみに、退職願・退職届のほかに、会社を辞めるという意味での書類として「辞表」があります。
辞表は、雇用関係がない立場(社長や取締役等の役員、公務員)の人が、その役職を辞めることを届け出るためのものです。
退職願・退職届に関して、「退職届はどこでもらえるのか・買えるのか?」と気になる方も少なくないかと思いますが、退職願・退職届の用紙/一式は、文具店や100円均一、コンビニで購入することができます。
また、インターネットで「退職届 テンプレート」「退職届 テンプレート 無料」と検索→Word/PDF形式でダウンロード可です。
用紙に関して、会社指定のフォーマットがあるケースもあるため、その場合は上司または人事担当に事前に確認しておくといいでしょう。
退職願・退職届の書き方ですが、パソコンで作成でも手書きでも、法的には問題ありません。
また、書き方のついて、縦書き・横書きについても、どちらでも問題ありませんが、会社によって指定のフォーマットがある場合には、作成方法や指定書式に沿います。そのようなケースの場合は事前に就業規則を確認しておきましょう。
書き方・文面の一般的なテンプレートとしては以下の通りです。
冒頭に「退職願」または「退職届」
↓
導入(文章の書き出し前)「私儀(わたくしぎ)または「私事」
↓
文章(退職理由)
※「一身上の都合」など
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退職日
退職願の場合は退職希望の年月日、退職届の場合は上司等と合意した年月日を書く
↓
届出年月日
退職願・退職届を提出する年月日を書く
↓
自身の所属・氏名を書く
※会社都合退職の場合でも、退職願・退職届の書面提出を求められた場合は、「一身上の都合」は相応しくないとされているため、具体的な理由を書くようにしましょう
会社の物品の返却
会社・勤務先からの物品の返却は、退職日までに行うものとなっており、貸与物/返却物は以下のようなものが挙げられます。
- IDカード(社員証)
- パソコン(スマホ/携帯電話)
- 制服(作業着等)
- 名刺
- 健康保険証※
※健康保険証は退職当日までは有効なため、退職日以降に返却するケースが一般的です
これらの返却方法については、会社によって異なる(手渡しで直接か郵送等)ため、事前に上司や担当者に確認しましょう。
まとめ
一般的な会社の退職手順と流れを解説しました。項目として流れをまとめると以下の通りです。
退職の意思を固める
↓
上司への相談
↓
退職日の調整
↓
退職願・退職届の提出
↓
会社の物品の返却
円満退職を目指し、計画的に進めるようにしましょう。
退職後は、会社から離職票を受け取り、次の就職先や失業手当の申請に備えます。(離職票について:退職後に失業手当の受給を希望する場合、離職票をハローワークに提出します)